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  平成18年6月20日号社説
 

「いただきます」の心を

 少子化の一方で、子供の生活を支える食が崩壊している。家族とは別に好きなものだけを食べる子供が増え、その結果、糖尿病や高脂血症など生活習慣病が増加しているという。そんな家庭の多くでは、食前に「いただきます」の声は聞かれない。いろいろな命を頂いて今の自分が生かされているという感謝の気持ちが薄らいでいる。
 
 子供が生活習慣病に
 食が人間生活の基本であることは、昔も今も変わらない。古代においては、その食を得るために、人は一日の大半を費やさなければならなかった。それが現代では、コンビニに立ち寄るだけで可能だ。そんな手軽さが、食の本質を見失わせたのではないか。
 本紙の初代社主である故松下正寿氏は、よく「その国の人たちが元気かどうかは朝食を見れば分かる」と言っていた。戦前、米国に留学し、米国人の豊かな朝食に驚いたからだ。最近の元気なアジアを訪れると、多様な品揃えに感心する。
 朝食をしっかり取ると体内の新陳代謝が盛んになり、その後の食も効率良くエネルギーに転換される。逆に朝食を抜くと、新陳代謝が落ちるため、エネルギー不足になるだけでなく、肥満しやすい体質になる。痩せ型の女性から生まれた子供が肥満体質になりやすいのもそのため。とりわけ体の基礎が作られる子供時代の食が貧しいと、人生の基礎が脆弱になる。成人になってから生活習慣病や骨粗鬆症に悩まされかねない。
 では、好きなものしか食べないという子供に、どうすれば何でも食べさせることができるだろう。一つは、子供と一緒に野菜を育てることだ。ある小学校では、校庭の家庭菜園で、何種類もの野菜を栽培し、給食に使っている。種まきや苗の植え付けから水やり、草取りをするのは子供たち。野菜がどうやって生長するのか、興味深く見ている。そして丹精込めた野菜が給食に上ると、「もったいないから全部食べる」となる。「食とは命を頂くこと」という先生の話も、心に染み込んでくる。葉物などはプランターでも簡単に栽培できるので、マンション住まいでも可能。親は自分たちのためにも、子供と始めてみてはどうだろう。
 野菜嫌いな子を、料理を手伝わせることで、野菜を食べるように変えた母親もいる。やはり、自分で手をかけることが、ものの命をいつくしむ心を育てる。いろいろな命に支えられた自分であることを、思い出させることが大切なのだろう。
 今年はイタリアでスローフード協会が発足して二十年になる。一九八六年、ローマのスペイン広場に、ハンバーガーチェーンのイタリア一号店がオープンした。ハンバーガーは「ファストフード」の代表。地域の特産品や伝統的な食文化を守ろうという人たちが、対抗の意味を込め「スローフード」運動を始めた。同協会は日本でも各地で設立され、本物の食材を使った本物の料理や食品を提供している。
 禅宗は精進料理を発展させ、食事を担当する典座(てんぞ)は、僧として最高の修行とされている。二十三歳で宋に渡った道元が、阿育王山の老典座に会ってその重要さを悟った話は有名だ。
 『バカの壁』で知られる養老孟さんは、近代化や都市化を「脳化」だという。頭で考えた通りにすることで、合理化に近い。しかし、頭が考えることは、全体のごく一部でしかない。その一部を全体だと錯覚してしまうのが、現代人の「バカの壁」である。

 宗教文化の回復こそ
 そんな時代に、宗教の一つの意義は全体性を回復させることにある。社会の基本単位は家族であるのに、個人が突出した時代に、人と人とのつながりの大切さを思い起こさせる。子供たちの食の危機は、現代社会の危うさの赤信号ともいえよう。その意味から、いわゆる食育はバランスの取れた食事で終わるものではないだろう。家族で食卓を囲む楽しさ、多くの命を思いやる知恵と優しさ、その根底にある伝統的な宗教文化の回復にたどり着かなければならない。

クョスコニョ    [1] 
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