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平成18年4月20日号社説 |
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脳細胞を増やす生き方
最近、人類の進化を扱ったテレビ番組で、肉食が脳が大きくなるきっかけになったという説が紹介されていた。栄養面というより、動いているものを捕まえるために頭を使うようになったからだと。別の生理学者の話では、脳細胞が増えるには肉に含まれるトリプトファンという物質が必要だという。さらに、これまで脳細胞は生後その数が増えないとされていたが、数年前、いくつになっても増えることが分かった。 ストレスは大敵 昔、ヒンドゥー教では修行のし過ぎや誤った修行のため精神に異常をきたした者に、インド蛇木(じゃぼく)の根をしゃぶらせたという。一九三〇年にインドの学者が、インド蛇木の根に精神を安定させる物質が入っていることを発見した。 これに目をつけたスイスの製薬会社がその物質を分離し、血圧を下げる働きがあったので、高血圧の薬レゼルピンとして売り出した。ところが、レゼルピンを服用した患者の中にうつ状態を訴える人が現れ、中には自殺者も出た。製薬会社がその原因を究明したところ、脳内のセレトニンという神経伝達物質が減少していることが分かった。そこで、脳内のセレトニンを増やす薬がうつ病の薬として開発されたという。 釈迦は脳と心はたいまつと明かりのような関係だと言ったそうだ。たいまつがないと明かりは光らないが、たいまつが明かりなのではない。つまり、心は脳に依存しながら、独立しており、その働きによって脳を変えることもできる。 現代はストレス社会といわれ、病気の大きな原因もストレスにある。ストレスが続くと生活習慣病になりやすいという。それは、ストレスを感じると、副腎皮質ホルモンの働きで血液中のブドウ糖濃度が高まるから。同時に、交感神経が活動して呼吸が速くなり、心拍数も増して、血圧が上がる。これらの変化は、動物が危機に直面したり、獲物を取るとき、興奮状態になることに由来している。すべて脳を活発に働かせる状況をつくるためである。 脳はほかの筋肉などに比べ、厖大なエネルギーを必要とする。しかも、エネルギーはブドウ糖に限られている。頭を回転させるために血糖値が高まっているにもかかわらず、頭を使わないでいると、慢性的な高血糖症になってしまう。それが、ストレスから生活習慣病になるプロセスだ。 また、記憶の入り口とされる海馬が、長くストレスにさらされると小さくなることが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えたベトナム帰還兵の調査で明らかになった。これが認知症になる原因の一つであろう。 脳細胞を増やし、活性化させるにはどうすればいいか。先の生理学者によると、まず転倒による打撲などで脳を傷つけないこと。次に、ストレスを溜めず、プラスの方向に頭をよく働かせる。そして、適度な肉と糖分を取ることだ。過剰なダイエットは体ばかりか脳にも良くない。 身体性を見直す かつて「美しい心がたくましい体に、からくも支えられる」という歌詞が、心と体の関係にふさわしくないという議論があった。確かに、たくましい体は美しい心を保証するわけではない。しかし、理屈で考えがちな近代人に、身体性に気付かせる意味はある。 脚本家の大石静さんは、机に置いた鏡でいい笑顔をつくってから仕事に取り掛かるという。日本のさまざまな道も、形から入ることを教えている。そんな意味からも、高齢化社会を迎え、まずは脳細胞を増やすような暮らし方をしたい。
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