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  平成20年9月20日号
 

喪失感からの立ち直り

 メディアで報道されるような悲惨な事故や事件が起こらなくても、私たちは生ある限り、多くの喪失に遭遇する。当然ながら、それは年齢を重ねるにつれて増えてくる。それが年老いた親との別れのように、自然な出来事であれば心の動揺も少ないが、思いがけない子供や伴侶の死に直面すると、心に大きなダメージを受けることが多い。
 ともすれば社会生活にも大きなマイナスとなることから、米国では早くからグリーフ・ケアが発達したという。前向きでプラグマティックな米国らしい。その成果が日本にも導入されている。もっとも、キリスト教の文化風土で育った理論と手法であることをわきまえる必要があるようだ。
 
成長の機会に
 本紙一面に取り上げたロバート・ニーメヤー教授によると、大切な人を失ったことによる喪失感から立ち直っていくには、次のような課題があるという。@生活への再適応A喪失の意味の再構成B愛着の解放C新たなアイデンティティーの構成――がそれだ。
 @は、残された者はまだ生きているのだから当然で、ある期間を経て、仕事や家事に取り掛からなければならない。二人暮らしの夫を亡くした妻は、つい二人分の食事を用意してしまうという。そうした状態から気持ちを切り替えて、独りで生きていく張り合いを見つけることが大事になろう。その際、夫の遺影などに自分と同じ食事を供えるのは、それなりに意味のある行為である。男性の多くは、仕事が悲しみを紛らわせてくれることが理解できるだろう。いずれにせよ、心の変調から健康を害さないことが大切である。思わぬ不注意で事故に遭ってしまう場合もあるという。
 Aは、ある程度時間を掛けて、繰り返し行うことになる。最初は、その喪失を人にどのように告げようかと考え、何度か修正して、最後には葬儀などで一応の挨拶をしたりする。しかし、それで終わりではない。やがて、その人と過ごした歳月を思い浮かべながら、それぞれの意味を再確認しようとする。それが、喪失の物語(ナラティブ)で、グリーフ・カウンセリングでは、ナラティブ・アプローチが有効だという。不思議なことに、過去の物語が作れると、未来の物語にも希望が出てくる。
 人は言葉で自分の物語を作りながら生きている。だからこそ、豊富な言葉で、深い物語が作れるよう、幼児期からの読み聞かせや家庭での読書習慣、学校での国語教育の充実が必要なのだろう。
 Bは、亡き人への愛着(アタッチメント)を象徴的なものへと昇華していくことである。何かにつけ思い出すのだが、それに心が奪われるわけではない。例えて言うなら、夢でその人に励まされたりする。いつでも取り出せる記憶としてあることで、その人は自分の中で生き続けていることになる。
 Cは、喪失に向き合うことにより、自分自身を成長させること。誰でも年を取り、肉親や友人の死を体験すると、幸福や平和といった抽象的な言葉も、実感をもって語れるようになる。その意味では、大きな喪失に遭遇した人は、それだけ大きく成長できる機会を与えられたと思うべきだろう。試練と言ってもいい。
 それは個人だけでなく、民族や国についても言えるのではないだろうか。逆にそう思えないと、引きこもってしまったり、最悪の場合、自殺に走るケースもある。それを防ぐのが家族や友達、共同体の絆だから、日頃からそうした関係を作っておくことも必要だ。
 
人生観を再構成
 講演の最後に、ニーメヤー教授は自身の母を家族で看取った映像を何枚も映し出した。とりわけ、二人の息子が祖母を見舞い、彼女の最期にも立ち会ったシーンは印象的だった。小さい頃から人の死に対面していると、いのちの意味が分かり、自分なりの死生観を身に付けるようになるだろう。
 ところが近年では、そうした準備もなく、突然、喪失に直面することが多い。明るさや豊かさを追い求め、その半面にある死を遠ざけてきた結果である。「良く生きることは良く死ぬこと」だと考え、私たちは自らの人生観を再構成する必要があるようだ。

クョスコニョ    [1] 
 前のテキスト: 平成20年10月5日号社説
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