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  平成22年2月20日号社説
 

無縁社会化の防波堤に

 一月三十一日のNHKスペシャルで「無縁社会〜恂ウ縁死揩R万2千人の衝撃〜」が放映され、大きな反響を呼んだ。ここ数年「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」など、誰にも知られず、引き取り手もないまま亡くなっていく人が増えている。日本は急速に絆を失ってしまった「無縁社会」に変わりつつある。
 かつて日本社会の特徴とされた「地縁」や「血縁」が失われ、終身雇用制の崩壊とともに会社がつないでいた「社縁」もなくなった。定年を迎えた団塊世代が家庭や地域に戻ってきたが、これまで縁づくりをしてこなかったため、定着できないでいる。

背筋が寒くなる
 年間自殺者が三万人以上に加え、同じ数の無縁死者がいるというのは、日本社会の現実を赤裸々に示している。NHKの番組では、「行旅死亡人」とされた六十〜八十歳代の男性の人生の軌跡をたどっていた。都内のアパートの部屋で、コタツに入り、座ったままの姿勢で遺体が発見された時には、死後一週間以上が経過していた。
 男性は給食センターで正社員として定年まで働き、二十年間、無遅刻無欠勤だったが、退職後は同僚との人付き合いもなくなっていた。出身地は秋田で、両親は既に死亡しており、家も都市開発でなくなり、遺骨は無縁墓地に埋葬されていた。
 視聴者からは、「画面を見ていて背筋が寒くなった」「将来、自分の身に起こるかも知れないと感じた」「事実を見せ付けられて、精神的に辛くなった」という声が多く寄せられたという。
 一人世帯はこの五年で12%増え、高齢者は三割近く増加しており、一人世帯は三割に達している(統計局)。近所に付き合いや話し相手のいない老人も増え、まさに日本は「無縁社会」化している。
 ホームレスになる人の多くも、仕事を失って社縁が切れ、家族をなくして血縁が断ち切られたのが原因だ。秋葉原で無差別殺傷事件を起こした派遣労働者の青年は、人生に絶望したとき、故郷・青森の両親の元に帰らず、ナイフを買って現代社会の一断面を象徴する秋葉原へと向かった。
 経済成長の時代、日本人の多くは後れた田舎から進んだ都会に出てきて、仕事の人間関係はあるが、近所との付き合いはない社会をつくってきた。必死に働いてマイホームを手に入れれば、そこには幸せがあると信じてきた。そんな夢を育んだニュータウンの多くが、今やオールドタウンとなっている。しかし、いずれそうなることは、少し考えれば分かっていたことである。
 古来から、日本人は和を尊ぶ共同体をつくって暮らし、人のことを「人間」と書いて、人間関係の大切さを心に刻んできた。その長い歴史から見れば、近代の、いや戦後の、個を価値の中心に置いた時代は、ほんの短い期間でしかない。
 本紙二月五日号で論じた北海道砂川市の神社をめぐる政教分離裁判も、そうした時代風潮がもたらしたものだろう。あの判決を出した最高裁判所の裁判官たちは、地域の大切な絆を切ってしまいかねないことに、考えが及ばなかったのだろうか。
 
時間軸でのつながり
 今、人々が絆の大切さを最も実感するのが、家族や友人・知人の死に臨んだ時だろう。その意味で葬儀は、死者とよりも生者との縁りを深め合う機会となっている。
 古来、コミュニティーは死に関する儀式を必ず伴っており、それによって絆を深めてきたとも言えよう。ところが最近、葬儀を行わない人たちが増えているという現実が、コミュニティーの崩壊を如実に告げている。
 私たちは周りの人たちとのつながりと同時に、亡くなった人たち、これから生まれてくる人たちとのつながりという時間軸の中でも生きている。その感覚が、人々に生きる意味と喜びを与えてきた。
 葬送儀礼をはじめ祭りや芸能などの発生も、多くがそこにかかわっている。今、宗教はその役割を見直し、回復すべきではないか。

クョスコニョ    [1] 
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