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  平成24年2月5日号社説
 

古事記と愚管抄の日本史

 天武天皇の命を受け、稗田阿礼が誦習していた天皇の系譜と先代の旧辞を、太安万侶が書き取り、編纂した『古事記』を、元明天皇により献上したのが七一二年。それから千三百年に当たる今年、各地で記念の行事が計画・実施されている。
 天照大神の孫・邇邇藝命(神武天皇の曽祖父)が葦原中国を統治するため降臨したという天孫降臨神話のある宮崎県では、宮崎市の青島神社や西都市の都萬(つま)神社などをガイド付きのバスが巡る。
 
国づくりの物語
 ヤマタノオロチ退治や大国主命の国譲り神話がある島根県では七月二十一日から十一月十一日まで、出雲大社周辺を主会場に神話の舞台を訪ねる「神話博しまね」が開かれる。
 奈良県では桜井市の大神(おおみわ)神社で「親子で学ぼう!古事記の世界」が開かれている。十月には、太安万侶ゆかりの田原本町と稗田阿礼の生誕地とされる大和郡山市を歩くイベントが企画されている。
 「国生み」神話の舞台、兵庫県・淡路島の伊弉諾神宮では二月十九日に記念大祭を行い、神話をテーマにシンポジウムも開かれる。
 政治の混乱や大震災、原発事故などで国の在り方、人々の暮らし方が問い直されている今、国づくりの原点から考えてみるのも意義深いだろう。唯物的合理主義の風潮から建国神話を軽視する風潮はまだ根強いが、大切なのは共有できる民族の物語があることだ。個人や家族と同じように、民族も物語を語り継いで生き続けている。
 今年のNHK大河ドラマは「平清盛」。武士の時代が始まる平安末期を書いた同時代の歴史書が『愚管抄』である。ちなみに『平家物語』はその百年後の鎌倉時代に、琵琶法師らの語り物として作られた。『愚管抄』がユニークなのは、「なぜそうなったのか」という歴史の道理を探究した、わが国初の歴史哲学書だったことである。
 著者は天台座主の慈円で、当時、最大の寺社勢力であった延暦寺のトップであり、すぐれた歌人でもあった。古代からの摂関家・藤原家のなかでも最高の家柄である九条家の出で、兄の九条兼実は平家滅亡後、関白になっている。
 崇徳上皇と後白河天皇の皇位継承争いに、藤原家内部の権力争いが絡み、配下の平氏と源氏が争った一一五六年の保元の乱の後、「武士の世になってしまった」と慈円は書いている。清盛が六波羅にあった平家の屋敷で、あるいは後に福原に遷都して政治を取り仕切った時よりも早く、そこに武士の世の始まりを見たのであろう。
 慈円が生まれたのは保元の乱の一年前で、父・藤原忠通は白河法皇から鳥羽法皇の院政で摂政関白を務め、藤原家の氏長者であった。保元の乱では、父・忠通と平清盛、源義朝が後白河天皇に付き、叔父の藤原頼長と平忠正、源為義・為朝親子が崇徳上皇側に付いた。忠正は清盛の叔父、為義は義朝の父である。その三年後に起きた平治の乱で、清盛は武士の頂点に立つ。一族を巻き込んだ争いを、慈円は耳にしながら育ったのであろう。保元の乱の年に母を亡くし、十歳で父と死別、鳥羽天皇の第七皇子だった僧に預けられ十三歳で出家した。
 天台座主になった慈円は伽藍の整備を進め、政治的には兼実の孫・道家の後見人となり、第四代将軍として鎌倉に下向した道家の子・藤原頼経に期待を寄せ、公家と武家の協調を目指した。つまり、慈円は宗教と政治の頂点から、自らも積極的にかかわりつつ、歴史の道理を考え続けたのである。その核心は、次のようであった。
 
道理に基づく政治を
 世とは結局、人のことであり、人が道理に基づいて政治を行うことが重要である。日本では古来、国王の家柄の人を国王にすることになっており、その中でも立派な人がなるべきである。万事を自分だけで行うことは無理なので、優れた大臣と相談しながら行うべきだ。しかし、運が尽きると因果応報の力に圧倒されてしまう。
 要約すると、「分をわきまえ、誠実に物事に対処し、よき運に導かれること」となろうか。現実に即して考えると、いつの時代でも、ごく当たり前の結論になるようだ。

クョスコニョ    [1] 
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