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平成24年2月20日号社説 |
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新しい国のかたちを示す時
税と社会保障の一体改革が大きな政治課題になっている。戦後日本の目標となった福祉国家で、保険医療の国民皆保険体制が確立したのは一九六一年で、国民皆年金も同年に始まった。 それを支えたのは経済成長と労働人口の増加傾向だが、人口は減少に向かい、現役世代が高齢者を支える年金制度の維持がやがて困難になることは、当時から予測されていた。 問題は、政治がそれを反映できなかったことだ。国益よりも党益、それより自分の当選が最優先の政治家は、有権者の耳に心地よいことしか言わない。もちろん、それが民主主義の基本なのだから、政治家がそうなるのも仕方がない。決めるのは主権者たる国民である。 デフレ脱却を 日銀が二月十四日、望ましい物価上昇率の目安として物価上昇率を年1%とする「物価目標」の導入を決めた。内外からの批判を受け、長引くデフレ脱却に本腰を入れる姿勢を示したことになる。 経済政策の柱は財政と金融で、日本では財務省と日銀がそれぞれ担当する。日銀の第一目標は物価の安定だが、値上がりだけでなく値下がりも異常が続くと経済を傷つける。物価の下落は企業の収益を低め、賃金が下がり失業が増えることにより、消費が低迷、さらに企業活動が低下するというデフレスパイラルに陥るからだ。 そうならないために、欧米の中央銀行は「インフレ目標」を設定し、2%程度の物価上昇で経済を維持しようとしている。景気が最大要因の政治と足並みをそろえるのが中央銀行の立場だが、日銀は政府からの独立に偏りすぎる傾向があった。 具体策としては、金融緩和で企業や個人がお金を借りやすくし、投資や消費を増やすために、国債や社債の買い入れ基金を現在の五十五兆円から六十五兆円に十兆円増やすことを決めた。しかし、この程度では不十分だろう。経済には心理的要因が大きい。物価安になれた消費者の気持ちを前向きに変えるには、さらに刺激的な金融政策が必要になる。 少子高齢化が進む日本が経済成長を維持するには、個人の活躍の機会を広げ、女性や高齢者などが経済活動に参加できるよう環境を整備し、アジアなどの旺盛な成長力を吸収することだ。東大が国際標準に合わせ秋入学導入を決め、企業も一斉採用から通年採用に移行する意思を見せたのも、その一環として評価できる。 年金制度も見直さざるを得ない。それには、介護保険制度を家族介護にも適用できるようにするなど、家族としての暮らし方を基本に進めるべきだろう。家族の支えがあれば、年金が少なくても生きられる。高齢者は節約だけでなく、前向きなことに投資する意欲も出てくる。そうやってお金が眠らないようにしなければならない。高齢者に偏重した福祉も見直し、子育てしやすい社会にすべきだ。 歴史的な経緯、国際的な環境を踏まえ、新しい国のかたちを示し、国民の理解を得るのが政治家の第一の役割である。しかし、今の政治は、民主党が自民党化し、自民党が民主党化して、国益よりも党益、党益よりも派益を優先して、停滞を招いている。 地域社会の要に 少子高齢化は限界集落の発生など宗教界にも大きな影響を及ぼす。施設の統廃合など、人口変化に応じた対策を進めざるを得ない。しかし、人々の絆を結んできた宗教の役割は、地域社会において維持・再生していく必要がある。 地域共同体は、荒々しい国際化、自由化の波から、人々を守る安心の砦でもある。強い地域経済があってこそ、国際競争にも立ち向かえる。政策的にも、その両者を確保することが求められるゆえんである。 政治家を選ぶのは国民であり、誤った政策のつけは国民が負うことになるのが民主社会である。 南欧諸国の危機を他山の石と見ると、ここで日本が変わらなければ、次は日本売りに世界が動くことになる。国民の側から政治を動かす時が来ている。
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