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  平成24年5月5日号社説
 

主権国家の軸を定めよ

 NHK大河ドラマ「平清盛」での清盛の父・忠盛のせりふになぞらえて言うと、人が一人前の大人になるには心の軸を定めなければならないように、日本も主権国家としての在り方の軸を定めることが求められている。言うまでもなく憲法のことで、四月二十八日は昭和二十七年に日本が独立を回復した日、五月三日は昭和二十二年に現行憲法が施行された日、そして四月二十九日は昭和天皇の誕生日である。
 今の政治の停滞も、好意的にみれば、民主党が責任政党としての学習をし、自民党が野党に下って奢りと怠慢を払しょくするのに必要な期間なのかもしれない。しかし、近隣に危険な国があり、日本の振る舞いが世界に大きな影響を与えるほどになった今、残された時間はわずかでしかない。

 国民の憲法を定める
 論理的に考えると、日本は独立を回復した時点で、主権者たる国民の自由な意思により、占領時代にGHQ(連合国軍総司令部)が制定した現行憲法を廃止し、新憲法を制定すべきであった。同じ敗戦国でも、きわめて論理的なドイツは、それに近い戦後史を歩んだ。
 日本がそうできなかったのは、日本人が論理的でなかったからではなく、当時の内外の政治状況からである。国会では社会党、共産党などの護憲勢力が三分の一以上を占め、憲法改正は事実上不可能であった。さらに、昭和五十年六月二十五日に起きた朝鮮戦争を契機に、占領当局の勧告に基づいて制定された警察予備隊令が基礎となり、二十七年には保安庁法が、二十九年には自衛隊法が制定され、戦争放棄の憲法九条を解釈で乗り越えていくという道が敷かれたのである。ある意味では、軸がしっかりしているから、解釈で対応できるとも言えよう。
 昭和十六年に開戦の詔勅を発しながら、二十年に終戦を主導した昭和天皇は、戦争と平和の間で大きく揺れたように見えながら、昭和二十一年一月一日のいわゆる人間宣言で、明治天皇の五箇条の御誓文を引用し、日本の伝統に基づいて民主化することを明らかにされた。それは、今上陛下が昨年三月十六日のビデオメッセージで述べられた「この大災害を生き抜き、被災者としての自らを励ましつつ、これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに深く胸を打たれています」に通じている。
 平忠盛・清盛親子は武家の世を開こうとしたが、その軸には天皇を中心とする神祇信仰があった。鎌倉時代から江戸時代まで続く武家の世の基本を定めた貞永式目でも、その初めに「神社を修理して祭りを大切にすること」とあり、次いで寺のことが定められている。そうした武士の心の世界は、厳島神社にある平家納経を見れば明らかだ。
 興味深いことに、最も保守的と思われる皇室が、歴史的には最も開明的であった。それが、古代においては仏教に基づく国づくりを、近代においては西欧列強をモデルとした国民国家づくりを成功に導いた。第三の開国とも言われる今、国民の憲法を定めることで、主権者とされた国民も、心の軸を定めることができよう。

 大震災後の生き方
 3・4面で平清盛と神戸について語っていただいた生田神社の加藤隆久宮司は、平成七年の阪神・淡路大震災で、社殿が崩壊するという危機に遭遇した。茫然自失の中、天の声のように父の声が聞こえたという。「おまえは大学の先生で文学博士だが、神社を建てているか? 私は滋賀の多賀神社と焼けた岡山の吉備津彦神社、そして大東亜戦争で六百発の焼夷弾で焼失した生田神社の、生涯に三べんも神社を建てた」。造営の宮司と言われた父の声に励まされ、神戸復興のシンボルになろうと、再建に立ち上がったのである。
 今の私たちには、東日本大震災後、原発事故後の日本をどう生きるかが問われている。喫緊の原発再稼働については、原発を一つの柱とし、事故を踏まえた安全対策を取るのが最善だろう。ところが、政府自身がその軸を決めきれないので、国民も揺れている。
 ゴールデンウイークには少し歴史を学んでみよう。軸を定めるには、歴史的な考察を深める必要がある。国にとっても個人にとっても、それは同じだろう。

クョスコニョ    [1] 
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