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  平成24年5月20日号社説
 

命を育て頂く営み

 この時期、各地で田植えが行われる。最初は空の色を映していた水田が、刷毛で薄い黄緑の絵の具を塗られたように色づき、日を重ねるごとにその色を濃くしていく。太陽の光で水が温むと、オタマジャクシが泳ぎ回り、それをゲンゴロウが狙う。
 麦畑では、麦の緑が少しずつ黄色に色を変え、やがて黄金色に輝きだす。繁殖の時期を迎えたヒバリが、朝早くから鳴き続けている。大伴家持が「うらうらに照れる春日にひばりあがり…」と詠んだ風景のままだ。
 農家の燃料が薪から化石燃料になり、伝統的な里山の景観は少なくなったが、それでも環境に合わせ、太陽の恵みを受けて、命が華やぐ季節を迎えている。

 天皇陛下のお田植え
 天皇陛下は五月半ば、皇居内にある水田で田植えをされる。昭和二年に昭和天皇がご自身の発案で赤坂離宮内に水田を作り、始められたもので、四年からは皇居内で行われている。陛下は九月ごろに稲刈りをし、取れた米は新嘗祭などに使われる。日本書紀に、天照大神が自ら神田を営み、新嘗の祭りを行ったとあることにならわれたのであろう。
 皇后陛下は日本古来の蚕「小石丸」を、自ら桑の葉を与えて飼われ、絹糸を紡がれておられる。神話では、天照大神も自ら機織りをしている。日本では神々がそれぞれ生業を持っているのも興味深い。
 各地の地域や神社には田植祭が受け継がれている。豊作を願う予祝であるとともに、つらい作業を忘れさせる歌や踊りであった。田植機が普及する一九七〇年代までは、農家は共同で田植えをしていた。
 男たちは代掻きをし、苗代から苗を取って運び、女たちが水田に一列に並び、定規を目印に苗を植えていく。後ろ向きに進むので、後方から見ると尻が横並びになる。その足元に、適度な間隔で苗を置くのが子供たちの役目だった。水漏れを防ぐために泥を盛った畔に穴を開け、大豆などまいていた。
 古代から続けてきた米作りの共同作業が、日本人の振る舞い方や性格を形成してきたのだろう。和を重んじ、人のために働くことを喜びとする心で、それが近代産業のものづくりにも生かされてきた。
 単位面積当たりの収量が高く、栄養に富む米が、日本列島の人口を飛躍的に増やした。そして長い間、米は富の中心であり、食の基本であった。
 ところが戦後、食生活の欧米化に伴い、米の消費量は減少に転じ、農家は減反せざるを得なくなった。
 一方、海外では日本食が健康食として評価され、ブームにさえなっている。日本という風土の中で、日本人はどのような食生活をすれば、健康な高齢社会を過ごせるのかが大きな課題の今、伝統食の良さを見直す時期を迎えているように思う。
 命の根幹である食は、何より安全で、安定した暮らしを守るものでなければならない。水田の保水機能は自然環境の保護に大切であり、地産地消は域内経済を健全に保つ。例えば、退職後に野菜作りをする人が、朝市で小遣い稼ぎができるような仕組みが、地域を元気にする。
 子供たちの食育も、田を耕し、種をまき、苗を育て、収穫するところから始めるべきだろう。自分で育てたピーマンは、喜んで食べる子が多いという。何より、命を育てる体験が、命を大切にする心を養う。これは、都会暮らしの大人にも言えることだが。心から「(命を)頂きます」と言える子供を育てなければ、日本の将来は危うい。

 命の不思議と宗教
 自分の死を自覚できる動物は人間だけであり、そこから命の不思議に目覚め、宗教が発生したのであろう。もともと宗教は人間の生き方そのもので、近代宗教のように、心の中だけに限定されたものではなかった。
 農業における宗教性とは、例えば、作物の声を聞ける耳であろう。経験や知識も必要だが、大切なのはその感性だ。感性レベルから、日本人を建て直す役割が、宗教にあるのではないだろうか。

クョスコニョ    [1] 
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