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平成18年4月5日号[天地] |
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今まで見た桜の中で一番好きなのは「高遠の桜」。アルプスに囲まれた伊那谷の小さな城下町高遠の城址公園がタカトウコヒガンザクラで覆い尽くされる。赤みの濃いピンクの小花が一斉に咲き、丘全体を春霞のように包む。開花するとどっと人が押し寄せ、車で行くしかないので、交通規制が行われる。今年は四月九日の予想で、五月五日まで「さくら祭り」が行われる▼天地子は妻の実家があった駒ヶ根市に四年住んだので、毎年、バイクで出掛けた。車の脇をスイスイ抜けて走るので、渋滞を気にせず盛りの日を狙う。義母にその見事さを話すと、「あたしゃ、ここに嫁に来てからまだ一度も見たことがないに」とうらやましがられた。地元の人は案外そんなもの▼この高遠、長野県上伊那郡高遠町だったのが、平成の大合併で今年三月末から隣の長谷村とともに伊那市に編入され新伊那市高遠に。桜は、明治の廃藩置県で高遠城が取り壊された後の明治八年(一八七六)、城址公園を整備する際に、河南の小原地籍、桜馬場にあった桜を植樹したのが最初。今では、千五百本に及ぶ大木が辺りを埋め尽くしている▼徳川六代将軍家宣の時代、江戸城大奥に仕え権勢のあった絵島が、役者生島新五郎との恋を問われて高遠へ流され、屋敷の中で二十八年、独り淋しく生涯を過ごした。当時の見取り図を基に昭和四十二年、高遠湖畔に当時の屋敷が復元されている。規律に縛られた大奥女中と、華やかな人気役者の恋物語「絵島生島事件」は、江戸時代の大スキャンダルだった。あでやかなコヒガンザクラに絵島を重ね合わせ、追想するのも一興。
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