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平成19年3月5日号[天地] |
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二月五日から十四日のインド旅行を、頭がまだ引きずっている。ベナレス市内で一番目立ったのは携帯電話の広告だ。数社が大きな看板や道路沿いのステッカーで宣伝していた。ヒンドゥー教徒の集まりでも、マナーモードにする習慣がないのか、あるいはそもそも機能が付いていないのか、スピーチのさなかにいろいろな着メロが聞こえてきた▼帰国して日本の格差社会の議論を聞くと、ついインドと比べてしまう。そこには絶望的な格差があった。自動車から航空機まで製造する財閥企業が、成長分野の携帯にも乗り込み、所得に比べて安くはない携帯を買う人たちからお金を吸い上げる。一方で、そんなものには無縁の人たちが、古代と変わらないような生活を送っている。早朝の道端で、いつものように洗濯する女性がいた。カースト制度は世襲の職業ともつながっている▼ガンジス河で沐浴する人たちを見ると、「人間には体と頭と心、そして魂がある」と語るヒンドゥー組織幹部の話が説得力を持つ。魂をどうするかが最大の問題なのだが、その横で「魚を買って放生しろ」と舟を寄せてくる男たちがいる。「ベナレスは宗教と歓楽の町」というインド人の言葉に納得し、門前には色街が欠かせなかった歴史を思う▼もっとも体の方は、インド帰りの天地子に「今夜はカレーにするね」と無邪気に言った妻のおかげで、すぐにインド離れした。
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